日本構音障害協会
資料編
構音障害白書 制作準備報告書調査票草案、用語集、ヒアリング項目案、参考資料候補等を整理した別冊資料。
資料編
本資料編は、構音障害白書の制作に向けて、今後の調査設計、用語整理、関係者への調査票案、ヒアリング項目案、参考資料候補等を整理したものである。
ここに示す内容は確定版の調査票ではなく、研究部内での検討、協力者への相談、当事者レビュー等を経て、表現、設問数、回答方法、倫理的配慮を調整していくためのたたき台である。
資料1 用語集
本報告書では、構音障害に関する基本的な用語を以下のように整理する。構音障害白書では、当事者、家族、支援者、医療・福祉・教育関係者、行政、企業、一般市民など、幅広い読者が理解しやすいよう、必要に応じて用語解説を追加・修正する。
| 用語 | 説明 |
|---|---|
| 構音障害 | 話しことばを作る過程に困難があり、発音や発話が聞き取りにくくなる障害。発話の聞き取りにくさは、本人の意思、理解力、判断力とは区別して考える必要がある。 |
| 運動障害性構音障害 | 発話に関わる筋肉や神経の働きに困難が生じることで、発話が不明瞭になる障害。脳血管疾患、脳性麻痺、神経筋疾患などを背景として生じる場合がある。 |
| 発達性構音障害 | 子どもの発達過程において、特定の音の発音に困難が見られる障害。音の置き換え、省略、歪みなどとして現れることがある。 |
| 失語症 | 脳の言語機能に関わる領域の損傷などにより、言葉を理解する、話す、読む、書くといった言語機能に困難が生じる障害。構音障害と併存する場合もある。 |
| 吃音 | 言葉の出だしが詰まる、音を繰り返す、引き伸ばすなど、発話の流暢性に困難が生じる障害。構音障害とは異なるが、話すことへの不安や会話回避につながる場合がある。 |
| 聴覚障害 | 音や言葉を聞き取ることに困難が生じる障害。構音障害とは異なるが、発話の習得や音声コミュニケーションに影響する場合がある。 |
| 合理的配慮 | 障害のある人が他の人と同じように社会生活に参加できるよう、個々の状況に応じて必要かつ適切な変更や調整を行うこと。 |
| 情報保障 | 必要な情報を受け取り、理解し、自分の意思を伝えられるようにするための環境を整えること。 |
| 意思決定支援 | 本人が自分の意思を形成し、表明し、選択できるよう支えること。本人の意思を周囲が置き換えることではない。 |
| 代弁 | 本人の発話が相手に伝わりにくい場合に、家族や支援者などが本人の言葉や意思を補って伝えること。本人の意思確認と区別して扱う必要がある。 |
| 代替コミュニケーション | 音声以外の方法を用いて意思疎通を行うこと。文字、筆談、身振り、表情、支援機器、アプリなどが含まれる。 |
| AAC | Augmentative and Alternative Communication の略。補助代替コミュニケーションを指し、音声、文字、身振り、機器、アプリ等を組み合わせて意思疎通を支える考え方や方法。 |
| 支援技術 | 障害のある人の生活や社会参加を支える機器、アプリ、ICT、AI等の技術。 |
| 音声認識 | 音声を文字情報などに変換する技術。構音障害の発話に対しては、現状では誤認識が生じる場合がある。 |
| 音声合成 | 入力した文字や選択した文章を音声として出力する技術。 |
| 予測変換型会話支援 | 短い入力、キーワード、場面情報などをもとに、本人が伝えたい内容の候補を提示し、会話参加を支える方法。 |
資料2 当事者向け調査票草案
構音障害白書では、構音障害のある当事者を対象に、生活上の困難、心理的負担、必要な配慮、支援技術の利用状況等を把握する調査を実施する。
実際の調査票作成時には、当事者が回答しやすいよう、設問数、表現、回答方法、自由記述の量を調整する。音声での回答が負担になる場合も想定し、選択式、文字入力、支援者による入力補助など、複数の回答方法を検討する。
| 領域 | 質問項目案 | 回答形式案 |
|---|---|---|
| 基本情報 | 年代、構音障害の背景、現在の生活状況、主なコミュニケーション方法、話しやすい相手、話しにくい場面 | 選択式 / 複数選択 / 回答しない |
| 日常会話 | 聞き返される頻度、聞き返しの負担、話すことをあきらめた経験、初対面の人と話す不安、話しやすい聞き方、つらい聞き返され方 | 4件法 / 自由記述 |
| 医療機関 | 診察で症状を説明しにくい経験、医療者が家族や支援者に話す経験、診察時に伝えたいことをあきらめた経験、診察で使えると助かる手段、医療者に知ってほしいこと | 選択式 / 複数選択 / 自由記述 |
| 行政・公共サービス | 行政窓口で話が伝わりにくかった経験、電話での問い合わせや手続きの困難、電話以外の連絡手段の必要性、窓口で望む配慮、公共機関に知ってほしいこと | 選択式 / 複数選択 / 自由記述 |
| 教育・就労 | 発表や音読の困難、友人関係への影響、就職活動や面接での困難、電話・会議・接客など職場での困難、学校や職場で求める配慮 | 選択式 / 該当しない / 自由記述 |
| 社会参加・心理的負担 | 外出や人との関わりを控えた経験、話す前の不安や緊張、代弁で助かった経験、代弁によって自分の意思が伝わらなかった経験、社会に知ってほしいこと | 4件法 / 選択式 / 自由記述 |
| 意思確認・代弁 | 本人ではなく周囲に話が向けられた経験、本人の意思を確認してもらえた経験、代弁が助けになった場面、代弁によって困った場面 | 選択式 / 複数選択 / 自由記述 |
| 支援技術 | 現在使っている支援手段、音声認識の利用経験、音声認識の有用性、誤認識で困った経験、今後ほしい支援技術 | 複数選択 / 4件法 / 自由記述 |
資料3 家族・支援者向け調査票草案
家族・支援者調査では、構音障害のある人を支える周囲の人が、どのような役割や負担を担っているのかを把握する。この調査は本人の声を代替するものではなく、本人を取り巻く支援環境や家族・支援者側の課題を把握するために実施する。
| 項目 | 質問例 |
|---|---|
| 代弁の場面 | 本人の代わりに話すことがある場面はどこですか。医療 / 行政 / 学校 / 職場 / 電話 / 買い物 / その他 |
| 代弁の頻度 | 代弁することはどの程度ありますか。よくある / ときどきある / あまりない / ない |
| 本人意思の確認 | 代弁するとき、本人の意思をどのように確認していますか。 |
| 本人の声の尊重 | 本人が自分で話したい場面で、周囲がどのように待つ、確認する、補助することが望ましいと感じますか。 |
| 同行の負担 | 通院、行政手続き、学校・職場対応などに同行する負担はありますか。 |
| 電話代行 | 本人に代わって電話することがありますか。 |
| 葛藤 | 本人のために代弁することと、本人の自己決定を尊重することの間で迷うことがありますか。 |
| 必要な支援 | 家族・支援者として必要な情報や支援は何ですか。 |
| 社会に知ってほしいこと | 構音障害のある人を支える立場から、社会に知ってほしいことは何ですか。 |
資料4 専門職向け調査票草案
専門職調査では、構音障害のある人への支援実態、支援上の課題、制度・地域差、研修ニーズ等を把握する。対象は医療職に限定せず、福祉、教育、就労支援、相談支援など、生活場面で本人と関わる専門職を含めて検討する。
| 項目 | 質問例 |
|---|---|
| 職種 | 言語聴覚士 / 医師 / 看護師 / 理学療法士 / 作業療法士 / 介護職 / 教員 / 相談支援専門員 / その他 |
| 支援経験 | 構音障害のある人を支援した経験がありますか。 |
| 支援内容 | 評価 / 訓練 / 生活支援 / 家族支援 / 学校・職場連携 / 支援機器導入 / その他 |
| 本人中心の支援 | 本人の意思確認、自己決定、会話参加を支えるために、現場でどのような工夫をしていますか。 |
| 支援上の課題 | 支援で難しいと感じることは何ですか。 |
| 地域差 | 支援につながりやすさに地域差を感じますか。 |
| 制度上の課題 | 制度や報酬、支援時間の面で課題を感じますか。 |
| 合理的配慮 | 医療、教育、行政、就労等で必要だと思う配慮は何ですか。 |
| 支援技術 | 音声認識、AAC、会話支援アプリ等に期待すること・懸念することは何ですか。 |
| 研修ニーズ | 支援者や一般社会に必要だと思う研修・啓発内容は何ですか。 |
資料5 一般向け認知度調査草案
一般向け認知度調査では、構音障害という言葉や、発話が聞き取りにくい人への接し方について、社会的認知の状況を把握する。この調査は回答者個人を評価するためではなく、社会の理解状況や啓発上の課題を把握するために実施する。
| 項目 | 質問例 |
|---|---|
| 認知度 | 「構音障害」という言葉を知っていますか。 |
| 理解内容 | 構音障害はどのような障害だと思いますか。 |
| 接触経験 | 発話が聞き取りにくい人と接した経験がありますか。 |
| 対応方法 | 相手の発話が聞き取れないとき、どのように対応しますか。 |
| 誤解 | 発話が聞き取りにくいことと、理解力や能力は関係があると思いますか。 |
| 配慮 | どのような配慮が必要だと思いますか。 |
| 啓発 | 構音障害について、どのような情報があると理解しやすいと思いますか。 |
資料6 ヒアリング項目案
調査では、アンケートだけでは把握しきれない経験や背景を丁寧に聞き取るため、個別ヒアリングの実施を検討する。実施にあたっては、本人の同意、途中中止の自由、発話以外の回答方法、聞き取り時間の負担に配慮する。
| 対象 | 項目 | 質問例 |
|---|---|---|
| 当事者 | 生活上の困難 | 普段の生活で、話が伝わりにくくて困る場面はありますか。 |
| 当事者 | 日常会話 | 聞き返されたとき、どのように感じますか。 |
| 当事者 | 回答しやすい方法 | 話す、書く、選ぶ、支援機器を使うなど、どのような方法だと答えやすいですか。 |
| 当事者 | 医療 | 診察で症状や不安を伝えるときに困った経験はありますか。 |
| 当事者 | 代弁 | 家族や支援者に代わりに話してもらうことについて、どう感じていますか。 |
| 当事者 | 社会に伝えたいこと | 構音障害について、社会に知ってほしいことは何ですか。 |
| 家族 | 支援の内容 | 普段どのような場面で本人を支援していますか。 |
| 家族 | 葛藤 | 本人の意思を尊重することと、支援することの間で迷うことはありますか。 |
| 専門職 | 支援上の課題 | 支援において難しいと感じることは何ですか。 |
| 専門職 | 地域差 | 地域によって支援体制に差を感じますか。 |
| 専門職 | 支援技術 | ICTやAIに期待すること、懸念することは何ですか。 |
資料7 想定される図表案
構音障害白書では、本文の理解を助けるため、図表を活用する。ここでは、今後追加・調整を検討する図表案を整理する。掲載する図表は、調査結果や編集方針に応じて精査し、必要に応じて追加、統合、削除する。
| 図表案 | 内容 | 掲載候補 |
|---|---|---|
| 図 構音障害白書プロジェクトの流れ | 本報告書 → 調査 → 構音障害白書 → 周知 → 継続調査 | 要旨 / 第7章 |
| 図 「伝わりにくさ」から社会参加制限までの構造 | 発話が伝わりにくい → 誤解・代弁 → 発言抑制 → 自己決定の制限 → 社会参加の制限 | 第1章 / 第2章 |
| 図 生活場面に広がる困難 | 日常会話、医療、行政、教育、就労、社会参加、緊急時 | 第2章 |
| 表 支援技術の可能性と限界 | 文字入力、音声認識、音声合成、予測変換等 | 第5章 |
| 表 調査対象と主な調査項目 | 当事者、家族、支援者、専門職、一般市民 | 第6章 |
| 表 構音障害白書制作工程 | 調査設計から公開・周知まで | 第7章 |
資料8 参考資料・引用文献候補
構音障害白書では、構音障害に関する専門的資料だけでなく、障害者政策、合理的配慮、情報保障、意思決定支援、支援技術、他団体の白書・実態調査等を参照する。本資料は、今後確認・精査すべき資料群を整理するものであり、最終的な引用文献一覧ではない。
| 分野 | 資料候補 |
|---|---|
| 障害者政策・合理的配慮 | 障害者基本法、障害者差別解消法、障害者総合支援法、内閣府「障害者白書」、合理的配慮・意思疎通支援に関する行政資料 |
| 構音障害・言語障害 | 言語聴覚士関連団体の資料、構音障害に関する専門書・教科書、リハビリテーション医学・音声言語医学に関する資料 |
| 情報保障・意思決定支援 | 意思決定支援に関する国・自治体・福祉団体の資料、情報保障や意思疎通支援に関する資料 |
| 支援技術・ICT・AI | AAC、意思伝達装置、コミュニケーション支援機器、音声認識、音声合成、AI倫理、個人情報保護に関する資料 |
| 他団体の白書・実態調査 | 障害者白書、失語症、吃音、難病、医療的ケア児等に関する白書・実態調査、NPO・当事者団体による生活実態調査 |
構音障害白書では、本文中の根拠を明確にするため、引用箇所と参考資料を整理する。本報告書段階では、今後参照すべき資料群を整理し、構音障害白書制作時に、発行主体、発行年、内容の妥当性、引用の必要性を確認する。
資料9 作成体制・研究体制案
構音障害白書制作にあたっては、日本構音障害協会の研究部を中心に、当事者、家族、支援者、専門職、研究者、外部協力者が関わる体制を構築する。体制づくりでは、当事者の声を中心に置くこと、調査倫理と個人情報保護を確保すること、編集過程の透明性を保つことを重視する。
| 役割 | 主な内容 |
|---|---|
| 研究統括 | 白書全体の方針、調査設計、章構成、最終確認を担う。 |
| 編集統括 | 原稿整理、章間調整、表記統一、進行管理を担う。 |
| 調査担当 | アンケート設計、回答管理、集計、分析を担う。 |
| ヒアリング担当 | 聞き取り、記録、要約、掲載同意確認を担う。 |
| 制度調査担当 | 障害福祉制度、合理的配慮、情報保障等を整理する。 |
| 技術調査担当 | ICT、AI、支援技術の可能性と課題を整理する。 |
| 当事者レビュー | 内容が当事者の実感から離れていないかを確認する。 |
| 専門家監修 | 医療、福祉、教育、制度、技術面の妥当性を確認する。 |
| 調査倫理・個人情報管理 | 同意取得、匿名化、録音・自由記述の取り扱い、個人情報管理の方針を確認する。 |
| デザイン担当 | 白書本文、概要版、図表、PDF等の制作を担う。 |
| 事務局 | 連絡調整、会議運営、謝金管理、広報、報告対応を担う。 |
資料10 今後の検討事項
本報告書を出発点として、構音障害白書制作に進むためには、以下の事項について研究部内で検討を進める。実施にあたっては、すべてを同時に決定するのではなく、調査目的、対象、倫理面、予算、公開方法の順に優先順位をつけて整理する。
| 検討事項 | 内容 |
|---|---|
| 白書の発行時期 | 調査の実施時期、白書第1版の発行時期を検討する。 |
| 調査対象 | 当事者、家族、支援者、専門職、一般市民のうち、初年度にどこまで調査するかを決める。 |
| 調査方法 | オンライン、紙、ヒアリング、団体協力など、回答方法を検討する。 |
| 調査倫理 | 同意、匿名化、音声データ、自由記述、個人情報管理の方針を決める。 |
| 協力者 | 当事者、家族、言語聴覚士、医療職、教育関係者、研究者、支援団体等への協力依頼を検討する。 |
| 予算規模 | 基礎調査版、標準版、充実版のうち、どの規模で進めるかを検討する。 |
| 資金確保 | 助成金、寄付、協賛、共同研究等の組み合わせを検討する。 |
| 公開方法 | PDF公開、印刷配布、概要版、報告会、Web掲載等を検討する。 |
| 継続体制 | 白書を一回限りにせず、改訂版やテーマ別調査につなげる体制を検討する。 |