海外の構音障害研究④

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海外の構音障害研究シリーズ

構音障害のある脳性麻痺児に対する療育・訓練について

本連載その1~その3において、私は「先天性脳性麻痺に伴う構音障害の改善方法」、なかでも「脳性麻痺児」に対する訓練や療育について重点的に取り上げてきた。ここで、その理由を改めて整理しておきたい。

自分自身の障害を土台に語るということ

まず第一に、私自身が構音障害を伴う先天性の重度アテトーゼ型脳性麻痺者だからである。

障害のある人は一般に、自分自身の障害については比較的深い知識を持っている。医師や専門家から説明を受けるだけでなく、自ら情報を集め、長年にわたり自身の身体と向き合ってきた経験があるからだ。しかし一方で、障害の種類や原因が異なれば、たとえ表面的な症状が似ていても、その実態は大きく異なることが少なくない。

構音障害もその典型例である。同じ「言葉が不明瞭である」という状態であっても、その原因が脳性麻痺によるものなのか、聴覚障害によるものなのか、それらの重複症状なのか、あるいは別の神経学的要因によるものなのかによって、必要な支援や改善方法は変わってくる。そのため、自分が直接経験していない障害について語る際には慎重でなければならない。ある程度の推測や類推は可能であっても、それをあたかも事実であるかのように語れば、誤解を生みかねないからである。

正確性を大切にするために

私は、障害に関する情報発信において最も重要なのは正確性だと考えている。そのため本連載で述べている内容は、私自身の体験と、文献や研究資料などによって確認できた事実のみを土台としている。あえて対象を先天性脳性麻痺に限定しているのも、その範囲であれば自らの経験を踏まえて責任ある議論ができると考えているからである。

なぜ脳性麻痺児に焦点を当てるのか

第二に、私が特に「脳性麻痺児」、すなわち幼少期から少年期の子どもたちに焦点を当てているのは、この時期が構音障害を含む多くの症状の改善において極めて重要な意味を持つからである。

私自身、6歳から10歳までの間に構音障害改善訓練を受けた経験がある。その結果、決して完全ではないにせよ、発話能力の向上という一定の成果を得ることができた。この経験からも、適切な時期に適切な支援を受けることの重要性を実感している。

早期の訓練や療育が持つ意味

脳性麻痺の症状は、脳や神経の損傷そのものによって生じるが、その後の成長過程において、異常な運動パターンや身体の使い方の癖が定着していくことで、さらに複雑化する場合がある。また、筋肉や関節の拘縮、身体の変形なども成長とともに進行することが少なくない。そのため、脳から身体への信号伝達の偏りや不自然な運動習慣が固定化する前に訓練や療育を開始することには、大きな意義がある。

この点については、私も障害への「医療的アプローチ」に一定の合理性を認めている。特に幼少期は脳や神経系の可塑性が高く、適切な刺激や訓練による改善効果を期待しやすい時期である。したがって、構音障害の改善を目指す上で、この時期への着目は避けて通れない。

早ければよい、だけではない

しかしながら、「早ければ早いほどよい」という単純な話でもない。

脳性麻痺児のみならず、子どもの発達には大きな個人差がある。脳や神経の状態、身体機能、知的発達、性格、家庭環境など、さまざまな要因が複雑に関わり合っている。そのため、ある子どもに有効だった方法が、別の子どもにも同じように有効であるとは限らない。

訓練の対象は「身体」だけではない

さらに忘れてはならないのは、訓練の対象が「身体」だけではなく、一人の人格を持った「子ども」であるという事実である。改善効果ばかりを追い求め、苦痛を伴う訓練を長期間にわたって継続的に強いることは、情緒の発達や学習意欲、自尊心の形成に悪影響を及ぼす可能性がある。場合によっては訓練そのものがトラウマとなり、本来得られるはずだった効果さえ失わせてしまうこともある。

私自身、そのことについて身をもって経験した。旧ソ連で受けた構音障害改善訓練では、今日であれば心理的虐待や身体的暴力と見なされるような厳しい指導が行われていた。訓練中に浴びせられた罵声や恐怖感、そして苦痛は、60年以上を経た今でも鮮明な記憶として残っている。確かに訓練によって一定得られたものはあった。しかし同時に、その代償も決して小さくなかったのである。

改善の結果だけでなく、方法を問う

だからこそ私は、療育や訓練を評価する際には、「どれだけ改善したか」だけでなく、「訓練対象者をどう捉え、どのような方法で改善を目指したか」という視点も同じくらい重要だと考えている。

まとめ

脳性麻痺児の症状や特性は実に多様であり、画一的な方法で対応できるものではない。そのため、一人ひとりの状態を的確に見極め、身体機能だけでなく心理面や生活環境にも配慮しながら支援できる高度な知識と技術を持った訓練士や専門家が必要となる。子どもの可能性を最大限に引き出しながら、その尊厳と心の成長を守ること。その両立こそが、これからの構音障害対応に求められる最も重要な課題であり、真に望ましい支援の姿ではないだろうか。

Author
古本 聡 日本構音障害協会 理事

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